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山さんVS山田営業本部長

多謝

職人の山さんは、菓子が焼きあがったらお役御免とばかりにふらりと工房を出て行ってしまった。多分、裏の川を下って行ったところにある釣り堀に行ったのだと思う。

残された工房で焼きあがった菓子を眺めてため息をつくのは、タコ社長と態度はデカイが書く字と肝っ玉の小さい山田営業本部長だ。

「やっぱなぁ、タコ。地味だぜ。」

「山さんに任せると言ったんだから仕方ないよ。味は良いんだから・・・。」

「ただなぁ、うちを選んでくださったのはアチラさんだが、出す菓子を選んだのは此方だからなぁ。責任の八割はうちだぜ。どうするよ?」

「どうするって、どうするかを考えるのが営業本部長の仕事だろ?」

焼きあがって梱包を待つばかりになっているリンツァートルテを前にして、おっさん二人は眉間に皺を寄せてぶつぶつ言っている。「香りは良いんだよな・・・。でもポピュラーな菓子じゃないし・・・。コレ、5周年記念で出すにはとにかく地味だ・・・・。」「おまけに週末は雨の予報だ・・・。」

最近は少しは勤務態度がマシになってきた事務員の山ちゃんが、パソコンをたたきながら「アタシが手を打っておいたから・・・。」とぼそっと言った。

「え?何?どんな手を打ったの?」とタコ社長が聞き返すと、山ちゃんは黙ってパソコンの画面を指差した。

「頼れるべきところに、頼ってみました。ここの管理人さんは本当に面倒見が良いから。すくなくとも営業本部長がやみくもに動くよりよほど集客に貢献してもらえます。あとはもう、お店の実力があるんだから外野は黙ってましょ。お店の評判を落とさない味ではあるんだから。食べた人の期待を裏切らなけりゃ、うちの仕事はそこまでです。」

「おおぉ~山ちゃん、タコよりよっぽど経営者発言だよ。」「うるさい!うちだけのことでなく、人様が絡むと俺はそこまで冷静になれないんだよ!」とあくまで小心者の二人のおっさん達ではあるが、とにかくリンツァートルテを梱包して、根岸のカフェに発送を済ませ、あとは落ち着かない3日間を過ごすことになった。

というわけで、カフェ・ハンズで供していただいたリンツァートルテ、完売したそうです。お店の5周年という冠がかかっていたことと、5周年を迎えたお店の実力があるんだから当然です。完売のご連絡をいただいて、足を引っ張らなくて良かった~と気弱なタコ社長と山田営業本部長はふたりして肩をたたき合っていましたが。(←大げさな!)

職人の山さんは次の仕事に黙々と取り組んでいるし、事務員の山ちゃんは発売になったばかりの「別冊少年マガジン」を読みふけってます。将棋界のホープ渡辺竜王の夫人が描くマンガ「将棋の渡辺くん」がスタートしたんだそうです。

事務員の山ちゃんが打った手、というのはコチラの掲示板にお知らせとして載せたこと。恰幅が良いだけでなく心も広い管理人さんが、ツイートしてくださったりスケジュールにのせてくれたりとフォローしてくださったので、そちらからのお客様もいらしてくださったようです。苦しいときの神だのみ。ありがとうございます。

土曜日はお天気が悪くて心配していたのですが、足を運んでくださった皆様、見た目がアレなのにご注文いただいた皆様、山さんの菓子を信頼してお出しくださったハンズのマスター&ママ、どうもありがとうございました。

工房は母の日のケーキの製作やらレッスンやらで、お店には伺えず申し訳なかったですが、落ち着いた頃にまた美味しいコーヒーをいただきに参上いたします。

そんなわけで皆様のご厚意に多謝。

「かすてら屋」

登戸の教室へ寄稿した山さん話をこちらにも載せておきます。

先生は12月の忙しさに力尽きたようで(?)HPにはかすてらの細かい工程説明をなさったいらっしゃらず、私の駄文だけ載せてました(汗)

なので、こちらにも駄文(山さん話に関してはこちらのブログ読者のほうが詳しいから)を載せときます。残念ながら今回の山さんはかすてら屋としてだけの山さんだからね!

お正月で相当ヒマだったら読んでやってくださいまし。

ではお正月三が日の最終日、今日も一日のんびりと過ごしましょう。私は12月の平均睡眠時間4.5時間という過酷な状況から解放されて、一挙に8.5時間睡眠に移行いたしました。やる気なんてゼロです。朝起きると「さ、今日も早く寝ようっと」と決意しています。ではおやすみなさい。(朝の8時半ですが・・・。)

「かすてら屋」 

私の頭の中にはおっさんが住んでいる。かすてら屋だ。年のころは53,.痩せぎすで少し猫背で、ま、登戸の先生ほどイイ男ではないものの、若いころにはそれなりに花街のお姐さん方につねられたり、ひっかかれたりはあったんじゃないかという面差しの、いわゆる昭和の香りのする渋いおっさんである。面倒なので仮に「かすてら屋の山さん」と名付けておこう。

 

 さて、山さんは暇人である。普段は私の頭の中の、西日のあたる6畳一間のアパートに住み、昼間は裏の川で釣り糸を垂れたり、詰将棋をして過ごし、夜になればせんべい布団にくるまってさっさと寝てしまう。私がかすてらを焼くときにだけ、肩ごしにひょいとのぞきに来るだけである。まちがっても、かすてらの神サマではない。それが証拠に私の腕は上がらないし、第一山さん自身、たまに買う馬券だって登戸の先生以上にあたったためしがないという。いくら専門外といえども自分の馬券すら当てられない神サマっていないだろう。

 

じゃぁ、山さんは「かすてら屋」としてなにをしているのかというと、私のかすてらが焼きあがるたびにクサしにくるのである。最初の頃こそ「ま、もう一歩だな」とか言ってはくれていたのだが、最近は良くて「ふんっ」、悪ければ舌打ちだけである。この秋の大スランプの時にはさすがに「そんなもんはトースターで焼いて喰っちまいな」というアドバイスをくれたけれど、焼き上がりに関してはいつもクサすだけで、有益な助言をしてくれたためしがない。それなのに、いるのである。「まだまだだな」と言うためにだけ存在しているのである。

 

 篁流という竹藪に分け入ってからすでにかなりの月日が過ぎたが、一緒に竹藪をさまよう諸氏の肩にもそれぞれ、かすてら屋の山さんのようなかすてら屋がのっているのかもしれない。決してほめてはくれない「かすてら屋」を頭に住まわせているのは、けっこうしんどい時もあるが、かすてらを焼く、というのはそういうことなのかもしれないな、と最近思うようになった。

 

今朝早く、かすてら屋の山さんは少し肩を痛めたとかで湯治に出かけてしまった。いなければいないでなんだか物足りないものである。湯治から帰ってきたら肩でももんで、酒のいっぱいも注いであげれば、2012年はもしかしたら良いかすてらを焼かせてくれるかもしれないが、いったいどうしたら自分の頭の中に住むおっさんの肩を揉めるのか、それがなにより難問だ。

 

 

 

どれが好きだった?

焼き菓子倶楽部が終わったあと、職人の山さんは季節性インフルエンザワクチンを打って、腕の痛みが肩まで広がったといって調子が悪そうだ。

タコ社長は、山田営業本部長の口車にのせられて販促用のアレコレを買って、ふと気付いたら年末の年越し資金が危ういので、金策に走り回り息があがっている。

山田営業本部長だけがなぜか元気で、来年の営業方針説明をタコ社長と山さん相手にやり始め、その結果、山さんが裏口から逃走。多分裏山を抜けて隣町のパチンコ屋へ行ったもよう。「クリスマスまでパチンコをやり続けるといって駄々をこねているから、早く迎えに来い」と隣町のパチンコ屋のおやじから電話があったが、その電話を受けたのが事務員の山ちゃんだったから「好きなだけやらしておけば。」とだけ言って電話は切ってしまった。

そんな工房の日々です。

さて、焼き菓子倶楽部で職人の山さんがやりたかったのは「焼き菓子ってのは、パウンドケーキとマドレーヌだけじゃなくて、もっと魅力的なひろがりのある世界なんだよ」ということを知って欲しかったことと、「焼き菓子にだって季節感を込められるんじゃないか」という挑戦でした。山さんの思惑は皆様方に届きましたでしょうか?

もし、よろしければ焼き菓子倶楽部に参加なさった方、どれがお気に召したかお知らせいただけませんでしょうか?来年のことを言うと鬼がエーンエーンと泣くゾと山さんは言っていますが、山田営業本部長は是非参考にさせていただいて「来期営業方針に盛り込みたい!」のだそうです。そんなわけで、今年の2月から始まった焼き菓子倶楽部を振り返ります。

Feb2 2月 「ツイートローネン&エリゼンマンデルトルテヒエン」
早春の味わいということで、軽やかな味からスタート。国産レモンを使ってコンフィチュールを作り、それを詰めました。タルトレット生地は少し厚ぼったいビスケット種で、そこにレモンのコンフィチュールを置きその上にレモンの風味のスポンジ生地を絞って焼きあげました。エリゼンマンデルトルテヒエンはどちらかというと冬の趣。アーモンドの風味を優しく包んだ小型ケーキでした。

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3月 「リコッタチーズと木の実のタルト」
胡桃、アーモンド、ヘーゼルナッツが入ったリコッタチーズの、以外にソフトな焼き菓子。タルト生地は甘みの入らない、ザクザクしたパートブリゼを使用。
リコッタチーズが輸入されるのは月2回程度ということを知ってけっこうびっくりでした。入荷待ちでヒヤヒヤ。

Club4d_2 4月 「黒糖とプルーンのタルト」
プルーンはあらかじめ洋酒で戻し、焼きあげてから少し馴染ませることでいちばん美味しい時期に届くよう調整いたしました。ケーキクラムをアーモンドクリームに混ぜふんわりとした食感と黒糖とプラムのコクが決め手でした。タルト生地はフィリングと馴染むパートサブレを使用。

Club5c_2 5月 「ガトーフランボア」
初夏にもなると、焼き菓子らしい重いものは野暮ったく感じられる季節。ラズベリーの酸味、そして冷して食べるというコンセプトで対応してみました。アーモンドクリームにラズベリージャムとカスタードを詰めて焼きあげたお菓子です。一緒に詰め合わせたチョコレートのタルトはウィスキーシロップを沁みこませた、これも冷して食べる焼き菓子でした。

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6月 「フォンダンショコラ」
6月といったらさくらんぼの季節でしょう?というわけで、まずサクランボありき、でさくらんぼを使ったお菓子をいろいろ模索して、結局冬らしい、フォンダンショコラにサクランボのコンポートを入れて焼きあげてみました。これも焼き菓子なのにクール便を使用するハメに・・・。中に入れたのはアメリカンチェリーをコンポートにしたものです。

07club2 7月 「ケーゼ ヴィスキートルテ」
夏本番になってますます、重い焼き菓子では食指が動かない時期です。「食欲増進には生姜」、夏向きの焼き菓子を考えるうちに辿り着いた結論です。もともとはタイトルどおりウィスキーの風味を全面に出すチーズケーキなのですが、生姜が風味付けとして入っているレシピです。今回は生姜を全面に押し出すべく、たっぷり使ったチーズケーキにしてみました。生地にはパートサブレを使用。

8yakigashi3 8月 「エガーディナーヌッストルテ」
8月は例年、キッチン山田は1ヶ月お休みする月です。でも今年は焼き菓子倶楽部があるしなぁ~、というわけで作っておいてからじっくり寝かせなければもったいない、このお菓子にすることに。実は焼き菓子倶楽部を始めるときから8月はコレ、と決めておきました。夏場常温配送が可能で、どんな猛暑でも大丈夫なお菓子です。で、夏バテ防止に役立つビタミンEを多く含むナッツぎっしり。湿潤な日本の夏に実は合っている焼き菓子です。

画像はちーさん撮影のもの。クオリティの高い写真って素晴しい♪

Yakigashi2 9月 「リンツァートルテ」
9月は夏の終わりと秋の狭間にあって、少し中途半端な月。気温は下がってくるので、そろそろ焼き菓子が美味しく感じられる頃です。
いろいろなスパイスを効かせたリンツァートルテは、中に甘酸っぱいラズベリージャムが入りますが、今回はひとひねりしてドライのいちじくを赤ワインで煮たものを一緒に詰めました。スパイス&ラズベリージャム&赤ワイン煮いちじくのコラボレーションになりました。

素敵な画像はやっぱりちーさん撮影のもの。

Kabocya2 10月 「タルトポティロン」

ここ数年、日本でも10月はハロウィン月間になってしまっていますね。ハロウィンに便乗して、というよりもハロウィンに出てくるいろいろなお菓子屋さんのかぼちゃものに対抗して作ったような次第です。

生地は甘みの無いパートブリゼを使いました。かぼちゃを蒸してからつぶし、火にかけて砂糖とバターを加えてペースト状にしたものとアーモンドクリームを混ぜて焼きあげました。

一緒に混ぜた漬け込みフルーツは、昨年の暮れからブランデーで漬け込んでいるものです。

Photo11月 「ビエノア」
記憶に新しい、11月の焼き菓子ですね。これも焼き菓子倶楽部発足当時から決めていたお菓子です。
まずは小さいパイ皿を探すことからスタートでした。パイ皿自体は本当に小さいのですが、パイ自体に厚みがあって、中ぎっしりなので出来上がりはボリュームが出て安心しました。
栗の渋皮煮は9月下旬と10月上旬に2回に分けて仕込みました。9月の栗は大きくて柔らかく、10月の栗は硬く締まったものだったので、両方の栗が入るよう調整しました。多分、食感が残ったほうが10月の栗です。本来はアーモンドクリームを主体としたフィリングだけが入るパイですが、今回は渋皮煮のほかにマロンピューレも入れて焼いています。多分、かなり贅沢・・・。(多分原価割れ)

1年を通して、タルト(パートブリゼのタイプ、パートサブレのタイプ)とバターケーキ、スポンジ生地、パイ生地というベースの上でも、チョコレート、チーズ、野菜、フルーツといった素材のうえでもバリエーションを展開できたかな、とその点では満足しています。

ありがたいことに来年も~!という声が上がっていますが、毎月というのはちとツライと職人の山さんがさっき、隣町のパチンコ屋から電話をかけてきました。取り上げ損ねた焼き菓子たちはまたそのうち、季節ごとに多分不定期に焼き菓子倶楽部としてやると思います。

ま、あとは山田営業本部長の鼻息次第かと・・・。

この長い記事にも、2月から11月という長期にわたる試みにも長々お付き合いいただきありがとうございました。

彼岸の入り

悪魔サイドがいろいろ人間界の欲望のリサーチを始めているらしい、ということをkanさんのブログで知った仏様が、極楽サイドも負けてはいられないとリサーチなんていうまだるっこしいことはすっ飛ばして、いきなりキャンペーンを展開することとなった。
題して「お彼岸特別プレゼント、抽選1名様 あなたの3つのお願い叶えます」 
蜘蛛の糸をつかった壮大なあみだくじの結果、なんとキッチン山田が選ばれた。本日昼過ぎ、関東Bブロック担当の大船の観音さんが派手なタスキをかけて工房に現れたのである。
「おめでとうございます!極楽からのお彼岸特別プレゼント!厳正なる抽選の結果、晴れてあなたが選ばれました!」
「さあ、あなたがかなえてほしい3つのお願いは何?!」
観音さんノリノリ。

いや、そう言われたって・・・・。
工房ではタコ社長と山田営業本部長と山さんが「お彼岸に入るとやっぱ、ケーキ屋は暇だよね」なんて言ってぐうたらしてたんである。

「いや、あの・・・急に言われてもですねぇ・・・浮かばないなぁ。ええと3人でひとつずつのお願いでも良い?」とタコ社長が恐る恐る観音さんにお伺いをたてると、「規則は規則なんだけれど・・・そこのお菓子食べさせてくれたらそれでもいいや。」との観音さんの寛大なお答。

「観音さん、洋菓子も食べるの?」
「そりゃぁもう好物、めったにたべられないし。お彼岸の間はおはぎばっかりだから余計にこういうの食べたくなるんだよねぇ」
「じゃ、アタシが食べてる間に相談して決めて。決まったら大きな声で言ってね♪」

観音さんがショーケースでケーキの物色を始めるのを横目に、タコ社長と山田営業本部長、山さんがそれぞれのお願いをとりあえず口にしてみる。

「あっしは、これだ!って納得できるかすてらが焼けたら、もうそれで死んでもかまわねぇ」「バカだなぁ、山さん死んじゃなんにもなんないだろう?そんな願いはナシナシ!」「じゃ本部長はなんの願いがあるってんすか?」「う~ん。やっぱり来年の恵子の高校受験かなぁ」「何?お恵ちゃんの高校受験?お恵ちゃんは部長に似ずに賢い子だから、そんなお願いしなくったって大丈夫だろう?それにほら、あの堅物のお恵ちゃんのことだ、そういうのも裏口入学って言うんですぅ!とか言ってへそまげて、また本部長と口きいてくれなくなるよ。」「う~ん。それもそうか・・。じゃ社長のお願いって何ですよ。」「そりゃもう、今月の資金繰りがなんとかなりますようにって」「うわぁ~ちっちぇ~!!」「これだから社長はいつまでたってもタコだって言われるんだよぉ」「だってえらいことだよ?今月越せなかったら。だろ?」「だけど、せっかく観音さんがこうしてさぁ」

ああだ、こうだといやはや男3人揃ってかしましいこと。そのうるささに耐えかねて応接室でお昼ご飯のあとの昼寝をしていた事務員の山ちゃんがバンっと扉を開けて出てきた。

静かにして!

あっちへ行って!

もうちょっと寝かせて!

ちーん!という鐘の音が響いて観音さんが力強くのたまわった。
「あなたの願い叶えましょう!!」
おっさん3人が茫然自失でいるのなど目に入らない山ちゃん、観音さんが食べ散らかしたケーキの残骸を見てさらに言った。
「ちょっとそこ!自分で食べたもんくらい片付けてよね!」
「いえ、お願いは3つまでということであしからず」

観音さんはしれっとそう言って悠然と出て行き、山ちゃんは大あくびをして、また応接室に寝に戻って行った。

あとには観音さんが食べたケーキの残骸のアルミケースだのケーキフィルムだのが、春の風にあおられて床のそこ、ここに散らばっているだけでありました。

さて、観音さんが召し上がったのは
Summertakayama2
シュークリーム5個と
Strawberry3
苺のタルトレットが3個
Bananamou
あと、バナナのムースを一皿。
「意外と味覚が子供だった」とあとで山さんは分析していました。

タコ社長の嘆き

生真面目すぎるほど生真面目で融通が利かない職人の山さんと、かたやズボラでいい加減、超アバウト人間の山田営業本部長を抱えるキッチン山田の工房で、タコ社長の仕事といったら、この二人にどうやって折り合いをつけさせるかといったことの連続だ。

でもたまに、二人それぞれ考えていることは真逆だけれど辿り着く結論は一緒ということもある。で、大抵それはタコ社長にとっては頭を抱える、もしくは膝を抱える、いや胃をおさえる、事態だったりする。

今回の難題はブレーメンに潜む悪魔TAEKOセンセイが裏で糸をひいていたらしい・・・。TAEKOセンセイと山さんはその昔大酒を飲みあった仲らしいので、山さんの弱点はしっかり握られている。

ブレーメンのお花の生徒さんから「11歳の息子のバースデーケーキをお願いできませんか?」というメールが来た。その時点ではどんなTAEKOセンセイのワナが仕掛けられているかまるで知らないタコ社長は、ふたつ返事で引き受けた。おまけに余計なことに山田営業本部長がメールに「せっかくのオーダーなので、わがまま言ってくださいね」と書き添えていたらしい。すぐにメールがオーダーしてくださった生徒さんから届いた。なにやら画像つきで・・・。

息子のバースデーケーキはショートケーキ系で、出来ればサッカーボールをどこかに載せてください。

こ、これは・・・無理だよ。どうやったらサッカーボールなんかケーキに載せるんだよぉ。これは断ろう、うん、それが良い・・・と思って振り向くと、そこにはじっと添付された画像を見入る山さんが立っていた。マズイ!偏屈な山さんはあまりデコレーションに偏ったデザインを提示するとすぐに「社長!ケーキは見た目より味が最優先です!」と言い捨てるのだが、一方で負けん気だけは強い!強すぎる!

添付されていた画像はどなたかの結婚式パーティーのケーキで、四角いショートケーキの上にサッカーゴールとサッカーボールが載っている、ほのぼのとした可愛いケーキだった。(多分山さんの方向性とは全く逆の)それをじっと見ていた山さんは「ふんっ!あっしのほうが上手い!」とのたまわった。作ったことないでしょ~?ねぇ、作ったことないでしょ?サッカーボール!「作ったことはありませんが、でもアッシのほうが上手いんです!!」ああ・・・これだよ。

救いを求めて山田営業本部長のほうをむくと「だって、せっかくのオーダーだからわがまま言ってくださいって、私メールで書いちゃいましたから。いまさら、それをサッカーボールだけは作れません、どうしましょうか?ってメールしてやりとりするの大変じゃありませんか。イヤですよ、そんなメンドクサイこと。」山田営業本部長・・む、む、無責任な!

そんなこんなで結局、山さんの腕だけを頼りにしてそのオーダーをお引き受けした。昨日がその納品日。午前中にブレーメンでレッスンがあったので、生徒さんと一緒になってケーキの仕上げをし、山さん作のサッカーボールも載せて、お花の教室でレッスンをうけていらしゃる、ご依頼主のもとへラッピングも済ませお持ちした。

Kento2

Kento3

お花の教室ではご依頼主と悪魔のTAEKOセンセイが満面の笑みを浮かべ待ち構えていて、中身を見たい!と箱を開けて他の生徒さんも交えて大騒ぎになった。喜んでいただけて山さんもとても嬉しそうだ。でも悪魔のTAEKOセンセイが他の生徒さんに「ね?言ったでしょ?無理難題を言ったほうが燃えるタイプなのよぉ~」と言っているのを小耳に挟む。こらぁ~!!

ま、KENTO君が箱を開けたとき「すっげぇ~!!」と喜んでくれればそれでイイヤ、というのがタコ社長、山田営業本部長、山さんの3人の統一見解ではあります。ブレーメンのさとこちゃんが眼レフで素敵な写真も撮ってくれたしね。これがそのカッコイイ写真です。

コレ見て山さんは鼻高々でありましたとサ。

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「焼き菓子倶楽部」構想持ち上がるも

ま、こういうことをぶち上げるのは、キッチン山田の山田営業本部長に決まっとります。この人は飲んでさえいなければ、けっこうマメに数字に取り組み、それなりにきちんとした仕事もするんです。年明けの会議で、今年度の目標数字をかかげ、その達成のための月次目標を積み上げた上で、この構想をぶち上げました。新規のお客様にうちのお菓子を試していただくきっかけになる企画なんだそうです。

お金をもうけるつもりはサラサラないのだけれど、このご時勢、いつなんどきロードークミアイセンジュウショキのお仕事も首になるかわからず、その時にちゃんと独り立ちするためには、きちんとしたシュミレーションが必要なんではなかろうか、という山田本部長の話には深くうなずくものがありました。しゅうるりー様とコンビを組んで流しのケーキ屋をやるという話もあるのだけれど、その際、どちらがボケでどちらがツッコミをやるかとか、いっそちーさんを巻き込んで「平成のかしまし娘」を立ち上げたほうがよかろうとか(そうなるともう菓子屋では無いナ)、それはそれでまだまだ揉めそうなので、まずは一人である程度はメドがつくようにがんばろうかと思っておるわけです。

よし、では今年は2月から11月まで年10回で焼き菓子を取り上げ、通常のオーダーの仕事の他に、積極的に売り出していこうじゃないか!という話でまとまりました。新春の売り出し会議はこうして無事終了し、そのあとは例年通りの酒盛りで、山田営業本部長も山さんもしこたま飲んで二人とも上機嫌だったのです。

しかし、このやり手の営業部長と気難しい職人の考えていることは天と地ほどの開きがあります。実際にどんな焼き菓子を取り上げようか、という話になったとたん、大もめにもめて収集がつかん有様。年の始めに10回分すべて決めておこうとする山田本部長に対して、山さんは「その時の気候とか、果物の出来、なにより職人の気分ののり具合で、作るもんは変わるもんや」と言い張り、がんとして譲らず。まあ、山さんの言わんとすることもわかるので、ここは山田本部長に抑えてもらってせめて節目の月の菓子だけは早めに山さんに考えてもらおうということになりました。

昼休み、そんな話をしに山さんを探しに行くと裏の土手でひっくりかえっておりました。

どんな焼き菓子を作ろうか・・・と考えているうちにわからなくなったのだそうです。焼き菓子というと普通の人が思い浮かべるのは、パウンドケーキだったりマドレーヌだったりだけれど、そうしたなじみの深いお菓子を取り上げても面白みがないし、自分の勉強のためにフランスの郷土菓子のようなものを取り上げたとしても、それが美味しいものでなければ、買ってくださったお客様に悪い。かといって昨今の流行のものに手を出す気はサラサラ無い。サテ、何を作ったら良かろうか?そもそもいったい自分はどんな菓子が作りたいんだ?

「アタシが美味しいって思う菓子っていったいどういうもんですかね?」と山さんに真顔で聞かれてしまった。自分ではどう思うんだね?と改めて尋ねると「カラメルの深い味も好きだし、胡桃やナッツの香ばしさも好きだけれど、かといってその味を春に食べたいかと聞かれるとどうもちがう気がする。春には春の花の軽やかさが似合う、軽いものが食べたいし果物の香り立つような味わいも捨てがたい。アタシはやっぱり日本に住んでいるからこの湿気の多い気候のなかでもスルリと胃に収まるもんが美味いと思いマス。ただね、やっぱり見せかけだけの味にはしたくないんです。」

きっと山田営業本部長には「コレだから社長はいつまでたってもタコなんだよ!」と侮られるとは思うのだけれど、山さんにはついつい「山さんが本当に美味しいと思うものを作んなさいよ。それをお裾分けするっていうスタンスでいいじゃない。どうしても作りたくない月はそれはそれで仕方がないからお休みだぁねぇ。」と言ってしまった。

そんなわけで来月からいつ何時お休みになるかわからない「焼き菓子倶楽部」(別名「山さん美食倶楽部」)がスタートします。2月にはHPもリニューアル予定でいるので、HPとブログ両方に月初、今月の焼き菓子ということで載せるつもりでいます。山田営業本部長が張り切ってぶち上げたにも関わらず、またしても地味で稼げなさそうな企画になりそうですが、ただ、① 常温配送が出来るもの(送料が500円程度で済みます) ② 少人数のお宅でも、もてあまさないサイズ ③ 価格を2000円から高くても3000円程度におさえたもの という条件だけは山さんに守ってもらうつもりでいます。

今まで頼んでみたかったけど、ちょっと敷居が高かったという方や、お家で自家用に楽しんでみたい、という方に試していただけたらと思っています。もちろんコアなお客様もどうぞ。この1年、どんなお菓子を山さんが取り上げるのか、タコ社長の私も興味があります。

山さんに無理を言って、すこしだけどんなものを取り上げるのか、決まっているものを聞きました。5月のガトーフランボワーズだけは決定だそうです。中身のラズベリーのジャムを、市販のものではなく手作りして作るそうです。これは直径21cmなのでこれより小型で、もしかすると型も変えるかもしれない・・・とのことでした。

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2月は・・・どうするんだろうか?

そして山田営業本部長は、 こんな展開で本当に大人しく黙っているのか?新年早々、風雲急を告げる厨房であります。  

タコ社長、頭を抱える

試食会が終わった今週が実は10月の山場でありました。週末にご注文が重なったこととレッスンの申し込みもあったので、試食会が終わっても気が抜けない1週間でありました。三連休したが為にロードークミアイセンジュウショキの机には未処理書類がたっぷし載っていたしね。

そんな折も折、ブレーメンのかおり先生よりメールが参りました。「スイーツクラスに予約が入りました。日本語がほとんど話せないタイ人女性です。英語はちゃんとしゃべれます」

どーしましょ。小心者のタコ社長は頭を抱えてしまいました。大学は国文科だったし、最近海外旅行なんて行ってないし、ロードークミアイセンジュウショキの仕事に英語が介在する余地はなし、近所に英語圏の人なんていないし、いったいいつから英語を話していないのだろう?

こ、こういう時は厚顔無恥の山田本部長あたりに押し付けちゃうのがいいかなぁ?と山田本部長に「タイ人の別嬪さんが、レッスンにくるのだけれど、山田部長ご接待お願い出来る?」と訪ねると、実に嬉しそうな顔で「別嬪さん?本当に別嬪さん?ok、ok~!I need you!I love you!♪」とだみ声で唄い始めた。ああ、これじゃ、毎回中華惣菜の売れ残りをチャイナドレスの美人に鼻の下のばしていて売りつけられているhirorinとかわりがないじゃないの

タコ社長は仕方なく、本屋へ出向き、英語と日本語と併記してある「英語で楽しむ日本の家庭料理」という本を買ってきた。学校で習う英語には料理でつかう用語なんて無い。卵黄と卵白に分けるだの、粉をこねつけるなど、そんな実際的なハナシは習ってこなかったよね!この本はレシピを英語で書こうと思ったときには実に参考になるな・・・。ただし、肝心のレッスンが翌日でご注文品をふたつも抱えていなければの話だ・・・。時間が無い・・・。倫敦さんのビップ姐さんにもお願いしてみたが、日本語でレッスンするしかないよぉ、という明快なお返事だったし。

タコ社長が頭を抱える中、I need you♪ I love you♪と鼻歌を唄う山田本部長の横で、山さんがぼそっと「ワタシらがしゃべれる英語くらいだったら、その別嬪さん、日本語でもわかるんじゃないですかぃ?」とつぶやいた。「でもレシピが・・間に合わない!」とあせって言うと、「要はその別嬪さんは日本に住んでいて日本でお菓子をつくってみたいわけでしょう。その望みを叶えてあげればいいんじゃないですか?社長?」と、もっともなことを言う。山田本部長、大いにうなずく。山さんは合理的な思考の末、山田本部長は単にメンドクサイのといいかげんなのとでその意見に賛成。ふと、山さんを見るとレッスン用のレシピを材料だけ英語にして、あとは作り方を簡単な言葉に直し、ぜんぶひらがなで書いて、かつ横に絵を書き始めた。

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少しだけ安心して「山さん、だいじょうぶ?」と聞くと「要は気持ちでさぁ。ところで、要は気持ちって英語でなんつうんでしょうね?」と聞き返された。ダメだ、どっちにしたって、日本語通じる相手だってうまく作れるとは限らないんだしな、とやっと腹を括るにいたりました。だって本当に時間がなかったのよ。(あったところで付け焼刃なんてレッスン時はダメだと思う)

かくしてレッスン日の今日となり、教室にチャンさん登場。すご~く清楚な美人!hirorinなら瞬殺されるな。で、おもいっきり明るい。日本語はうまくしゃべれないけどほとんどわかるとのこと。レシピを見せるとイラストが大受け!「キュート!」を連発。「センセ ウマイ!」と大喜び。おだてられると調子に乗る山田本部長があとはしゃしゃり出てきて、チャンさんにまとわりつく。(オヤジ丸出し)薄力粉と強力粉の違いは性質の違いなんぞは飛ばしてスポンジケーキやシュークリーム、エクレアを作るのなら「バイオレット」パンをつくるのなら「カメリア」。上白糖を買いたければ「スプーンマーク」を買えばよいことを教えてあげる。なんだ、そういう本当に具体的なことを知りたかったのね。綺麗に出来たエクレアを詰めた箱を抱えてチャンさん帰っていきました。「センセイ、ベリータイアード?」「うんにゃぁ、またおいでね」という会話でお見送り。

だから、私が言ったでしょうが?

「餡汁より芋が安し」ってぇ。

や、山田部長!「案じるより産むが易し」って言ってくださいよぉ。タコ社長はまた頭を抱えたのでありました。

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実はブレーメンでの教室は本日からお引越しして同じビルの中の4階に移りました。かなり広々と使いやすくなりました。

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アンティークのテーブルの上で作業をします。「傷つけたら・・・」と言うとかおり先生は笑って「だって、これ、もう傷だらけだよぉ。」と。確かに!

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隅にはキッチン山田のパネルがちゃんと飾ってありました。お引越し作業してくださったかおり先生とブレーメンのスタッフの方達ありがとうございます。身に余るスタジオです。

いままでのお花のクラスのお隣も賑やかで楽しかったのだけれど、今度からは集中して且つリラックスしてレッスンに励めます。さぁ、午後のSさん、リー夫人るるさん、お待ちしておりますよ。あ、ヌシさんもご入会、いかがですか?

山さんがちゃぶ台を!!!

おはようございます。試食会の様子をいろいろなところで取り上げていただいて本当にありがとうございます。またご紹介いただいたブログについてはまとめてリンクを貼らせていただきますね。

と、いうわけで今朝の担当はタコ社長です。工場長、山さんは今朝から次のご注文品の製作に取り掛かり、オーブンで焼いている今の時間は座布団をふたつに折った枕で寝転がりながら新聞を読んでいるようです。

さて、試食会前の忙しい時期の話であります。その日は朝からご注文品の製作&発送準備に追われ、午後はブレーメンでのレッスンと忙しくすごしておりました。さすがにブレーメンでのレッスン後はくたびれて足がだるくなっていたので、山田営業本部長と山さんと試食会の打ち合わせも兼ねて少し休憩をしようと、東急SCの小○珈琲店に入りました。

ここは珈琲がそこそこお高いのだけれど、店の作りが広々としていて疲れた時にはうってつけの店です。この日、山さんは昼食に素インスタントラーメンを食べただけだったので、なにか食べたいとメニューを見始めました。ここは京ロールと銘打って米粉を使ったソフトなロールケーキが売りです。私としても山さんにそれを食べたら?とすすめてみたのですが、疲れているときに生クリームは食べたくない、と言われ、チーズケーキ(400円也)か、メニューの端にあったホットケーキを次候補にあげてみました。

「ホットケーキ♪」急に山さんの顔がほころびました。私としてはチーズケーキより高い530円という値段設定と、メニューの写真のしょぼさにちょっと嫌な予感はしたのですが、山さんの疲れがそれで少しでもとれるのならと「コーヒーと合わせて1030円って、ランチ並みの値段じゃん!」という言葉を飲み込んで経営者として太っ腹なところを見せたわけです。

コーヒーと一緒にソレは運ばれてまいりました・・・・。直径10センチに欠ける薄いパンケーキ状のものが2枚、四角い立派なお皿の上に並べられて・・・・・・・・・・。

山さんの顔色が変わったのを、私は見逃しませんでした。山さんの視線の先にあったもの、それは・・・。

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パックに詰められたマーガリンとおなじくパックに詰められたハニーメープルだとぉ~!!!

目と目があった山田本部長と私、とっさにテーブルを押さえつけました。

山さんがちゃぶ台をひっくりかえす!!!ところをあやうく阻止。

ぷるぷる震える山さんをどうにかなだめて、そのうすっぺらいパンケーキにマーガリンを塗りハニーメープルをかけて口にほおばり、コーヒー(コーヒーだけは美味しい)で流し込んで急いで店を出ました。

美味しい本物のホットケーキが食べたいよぉ~と子供のようにごねる山さんを連れて私自身も「あれで1030円はサギじゃないのか!」と憤りつつ帰宅したのであります。

美しい器に盛られてあっただけに、ホットケーキに平気でマーガリンを(それもパック詰めの)添えて出す神経、メープルシロップをパックのもので済まそうとする感覚、それは本当に貧しいテーブルに見えました。なぜこんなことが平然と行われているのだろうか?これがマクドナルドやファミレスなら私もなんにも言わない。(もしやファミレスのほうがもっとマシなホットケーキを出すのかも)

美しい器も大事。でもそれはまっとうなものがのってこその器でしょ。

試食会前のとてもとても悲しい出来事でありました。サバさん、ちーさん、こんど一緒に本当に美味しいホットケーキを 食べに参りましょうね。

山さんにはとりあえず、試食会後には蒲田のシビタスでメープルシロップをたっぷしかけてホットケーキを食べようね、と話しております。

山さん好み

まだまだ日がある、と高を括っていたのだけれど、今朝はやけに涼しくて気がつけばもう10月は目の前に来ている。ヤバイ。

10月はレッスン希望も順調に入っているし、ご注文もすでに何件か入っていて、紅玉りんごは5日過ぎに出荷だという果樹園からのメールも来た。「だ・か・ら・9月中に出来る事は、全部やっておくように!」とタコ社長から言われていたっけ・・・。

そう、本日の私の人格は「山田営業本部長」であります。

先日工場長の山さんと試食会にお出しするケーキの打ち合わせをいたしました。例年通り、軽いものから徐々にメインのものへ、という流れは変わらないのだけれど、今年山さんが提案してきたケーキのラインナップは、見事に良く言えば「玄人好み」、営業サイドから言わせると「よくぞまあ、ここまで地味にできたもんだ」とあきれるほど、地味。

あのさぁ、ケーキなんだからぱぁ~と華のあるヤツとかなんで出せないわけ?作れないわけじゃないでしょ?と山さんに再度提案をしなおしてもらったのだけれど、そうして出てきた第2案が、これがまたさらに輪をかけて地味・・・(嘆)

あらたに、山さんが提案してきたラインナップの〆のケーキが、これはもうどうにかなりませんか?と泣いてお願いしたいくらいの地味なナリで、これはさすがに営業としては受け入れられない、と突っぱねたら、山さんは無言で試食用のケーキを風呂敷包みから取り出した。実はこれをもって代官山の事務所へ行き、その日出勤していた人たちにも食べてもらったのだけれど、その結果・・。

営業としては口惜しいけれど、「これ以上、何も足せない、何も引けない」という味なんだな、これが。食べてくれた人たちも一様に「これだけで完成してる」というご意見で、浅はかにも「これをチョコレートガナッシュで覆ってしまえばもう少しマシな外観に・・・」とか思っていた私の思惑も見事にはずれてしまいました。

鼻の穴をふくらました山さんの顔が浮かびます。

そんなわけで、営業サイドとしてもこれ以上ゴタゴタ文句をつけても始まらないので今回の試食会は思いっきり地味という路線でいくことに決定しました。もう、山さんの好きにやってもらいます。

ズバリ、第4回試食会のテーマはこれです。

「見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮れ」

せめてもの華に司会を本牧マダムにお願いすることになりました。あとはご出席いただけます方々が会場の華となってくださいますよう、お願いする次第です。

そして最後のケーキ、(チョコレートケーキということだけはお伝えいたします)これは楽しみにしていただいて良いかと思っております。

山さんと合流

私達が裏磐梯高原ホテルのロビーで宿泊手続きをしていると、そこにふっと山さんが現れた。手には小さな風呂敷包みをひとつとスケッチブックを携えているだけである。

いままでどこで湯治をしていたか聞いたのだけれど、もごにょご言っていていまひとつ要領を得ない。ま、あまり言いたくないのだろうけど、そこそこ顔色も良いので湯治の甲斐はあったのだと思う。常日頃、あまり栄養のあるものを食べているとは思えない山さんにここではちょっと贅沢をしてもらい、美味しいものをいっぱい食べて温泉でのんびりしてもらいたい。

幸いなことにここの温泉は山さんに合ったらしく、入るたびに肩の調子が良くなるようだと言ってくれた。温泉から出ると山さんは部屋でカリコリとペンを走らせ日記をつける。冬の諏訪旅行で始めた旅日記は寡黙な山さんにとって最高の娯楽らしい。今回は色鉛筆まで持参している。本当はケーキの線描き図案の為に山で植物のスケッチをとろうと持ってきていたらしいのだけれど、お山は天気が不安定でそれは断念したらしい。

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植物のスケッチが出来ないとなると、山さんの興味はやはり料理に尽きる。初日のホテルのディナーでは久しぶりのご馳走に舌鼓を打って、満足だったのだと思う。部屋に帰るとすぐにカリコリと描き始めた。

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やはりそこは菓子職人の山さん。特にデザートで出された白桃のスープ仕立てにはかなり感銘を受けたもようで、しっかり描き込む。今回はあくまで植物を描くつもりで持ってきた色鉛筆。そのためどちらかといえば彩度を落とした自然色にちかい色を選んできてしまい、ビビットな赤や黄色、黄緑色を持ってこなかったので、料理の鮮やかな感じがでないと、山さんはこぼす。単なる記録なんだからいいんじゃないの?という羊さんの言葉には「これだから素人さんは・・・」と苦笑いでかえす。

こちらは翌日の日記。他のページもあるのだけれど、やはり山さんが一番熱心に描くのは「何を食べたか」に関してのようだ。

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ホテルでは和食、という選択肢もあったのだけれど翌日は山を降りて温泉旅館に泊まるので、和食はそこで堪能すればいいという羊さんの意見でまたもやフルコースのディナーとなった。そしてここから山さんの「もう食べられないヨ」コールが始まった。この日はスープがコーンとかぼちゃの冷製ポタージュだったので、美味しいのだけれどお腹に溜まる。パンも一個にしてどうにか魚料理(これはとても美味しかった。平目のテリーヌを平目で巻いて蒸あげ、柑橘系のソースをかけてある)までは辿り着くが、メインのビーフシチューにいたっては山さん、付け合せの野菜ばかり突く。もう完全ギブアップ状態である。お肉をどうにか一切れ片付けて、デザートもお断りする。羊さんが食べるデザートを凝視して、しっかり絵だけは起こしているけれど、実際には一口も口にしていない。この日記を描き終わると、山さん倒れるようにして温泉に行ってしまった。

翌日は山を降り、郡山市内の磐梯熱海の温泉に泊まったのだが、山さん昼食も軽く蕎麦を食べたっきり。今夜は和食だから大丈夫だからね、と羊さんが慰める。そして出された夕食は。

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旅籠膳というもので、これくらいならいけると山さんも食べはじめたのだけれど、このあと「後出し膳」といって加えて天麩羅や福島の郷土料理の「こづゆ」などが出てきてしまった。この日の山さんの日記。

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山さんには美味しいものいっぱい食べてもらいたかっただけなんだけどなぁ。

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山さん、横浜に帰ったらまず玄米ごはんを炊いて、茄子とキュウリが食べたいと言ってました・・・。でも温泉はとっても気に入ってくれた様子です。

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